陽子さんのコラム。6話から10話
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第6回 悩める3歳児
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「お母さん、保育園でね、どうしても○○君と仲良くできないの。○○君
ぶってくるの。」
「ふ〜ん、あなたはずっと前に○○君ぶっちゃったことあるの?」
「ある」
「その前は○○君ぶってきた?」
「ない」
「あなたがぶった後から○○君はあなたをぶつようになったんだね?」
「うん」
「○○君ぶった後ゴメンナサイした?」
「先生にダメよって言われてしたけど、その後からぶってくるようになった」
「そう、あなたにぶたれたのが痛かったんだね」
「どうやったら仲良くできるの?いつも側に行くと怒るよ」
「じゃあ離れれば」
「え?それじゃあ仲良く出来ないよ」
「そうだよ、仲良くできないんだよ、やっちゃいけない事をすると無くしちゃう物が
あるんだよ、それと元から仲良くなれる人となれない人は必ずいる」
「お母さんも仲良く出来ない人いるの?」
「今はこれと言っていないけど、やっぱりお母さんも子供の時に仲良く出来ない
友達はいたよ」
「ずっと仲良くできなかったの?」
「うん、お母さんとその仲良く出来なかった友達とは、ぶったりとかそういうのは
なくて、普通にしてて仲良くできなかった」
「仲良くしようってしなかったの?」
「しなかったね、その友達の側に行って嫌な思いをする事から逃げた」
「仲良くしようよって言われなかった?」
「誰に?」
「先生が言ったよ」
「うん、お母さんも子供の時言われたよ、でも出来ないんだから仕方ないじゃん」
当時自分の周りにいた大人達はみんな同じ事を言った。
゛お友達と仲良くしようね゛
でも、大人達はどうだったか。
その場にいない人の悪口を言っている人がいた。
本人に会うと自分の本当の気持ちを隠し、笑顔の仮面を付け挨拶を交わすのだ。
私はその行いが嫌いだった。
そこまでして友達を得たいと思わなかった。
仲良くしようと頑張るのも自分だし、辛い思いをするのも自分。
なら仲良くするしないは自分で決めてもいいのではないか。
子供の事を思って仲良くしろと言っているのか、大人自身が安心したくて仲良く
しろと言っているのか…。
子供の頃の私の眼には、大人は自分の子供に友達が多いと安心するように見えた。
「お母さんも先生と同じで仲良くなってもらいたいよ、でもあなたは先生に言われた
から、お母さんに言われたから仲良くするの?今まで仲良くしようと側に行ったりと
かしても仲良くできなかったんだよね?あなたはどうしたい?」
「したくない、もう、疲れた」
「そう、それじゃあお休みしなよ、ちょっと休憩。よく頑張ったね」
「……うん、いいの?」
「何が?」
「仲良く出来なくて」
「いいよ、もう疲れたんでしょ?お母さんは友達って頑張って作るもんじゃないと
思うし…」
「…うん、わかった」
その後、息子の口から仲良く出来ない友達の名前は出てこなくなった。
側に行くのを辞めたらしい。
息子の悩む顔を見なくなった。
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第7回 母親不合格
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息子(3歳)と一緒に散歩をして、公園に行くのはいいのだが、まったく
知らない他の子と、そのお母さんなどがいると正直言って嫌だ。
息子は保育園で他の子と遊ぶという事に慣れていて、あまり喧嘩は
しないのだがまったくないわけでもない。
子供は仲良く遊んでいても突然ちょっとした食い違いで大喧嘩を始める。
自分の子が悪いのなら、きちんと叱る事ができるのだが、明らかに相手
の子が悪い場合、そのお母さんがきちんと自分の子を叱ってくれれば
良いが、そうではない時もある。
一緒に来たらしき子のお母さんと、ベラベラおしゃべりをしていて、自分
の子が他の子と衝突している事に気がついていない場合もある。
男の子同士だと殴り合いになるのは珍しくない。
ある程度は様子を見るにしても、エスカレートしていくパターンが多く、
最終的には親の出番がやってくる。
相手の子のお母さんが気づいていない場合、ハッキリ言ってやっかいだ。
相手の子が悪かった場合、息子は自分が悪くないのは確信している。
自信満々だ。
だが私は気心知れた子ならまだしも、相手の子を強く叱る事はできない。
息子はそんな私を見て面白くないだろう。
息子から見れば私はその場にいる最大の身方なのだから。
相手の子だって、その最大の身方に叱られるのは面白くないだろう。
いつも一緒に遊んでいる子のお母さんとかなら話は別だが、この場合、
相手の子から見れば私はただの最大の敵だ。
私がどんなに正論を吐いても、相手の子は、自分の子を傷つけられて、
怒っている親だというフィルターを通して話を聞く。
そして自分がなぜそうしてしまったのか決して話してくれない。
これは当然の結果。
私は普段からその子とコミュニケーションをとっていない人間。
その子のために行動したこともないし、心を通わす努力をしたこともない。
何の積み重ねもない人間が、その子の心の窓を開けるのは無理だろう。
今その場にいる人間で、手っ取り早くその子の心の窓を開けることが出来
るのも、何のフィルターもなくその子の気持ちに声を届ける事ができるのも、
その子を生んだ親だけなのだ。
だから、私は相手の子のお母さんが、気がついてない時は、相手の子に
自分のお母さんの所へ連れてってもらう。
しゃがんで相手の子と目線を合わせ、笑顔で
「喧嘩しちゃったね、でもウチの子といっぱい遊んでくれてとても嬉しいよ。
バイバイする時、笑ってバイバイしたいから仲直りしたいの。仲直りするには
あなたのお母さんが必要なの。あなたとあなたのお母さんと、ウチの子と、
おばちゃんでお話しよう。」
こうすると相手の子は自分のお母さんの所へ私達を導いてくれる。
そして自分のお母さんに事情を説明してくれる。
何のわだかまりもない素直な
「ゴメンネ」という言葉を息子に言ってくれる。
息子も殴り返してしまった事を、素直に相手の子に謝り仲直りをする。
この時の相手の子のお母さんは、自分の子に謝れと言ったわけではない。
ただ、自分の子の話を聞いていただけ。
その子のお母さんは側にいるだけで、生のその子を引き出せ、安心させる事が
できた。だがそうできないお母さんもいる。
子供の事情を聞く前に、怖い顔で
「何?アンタまた何かやったの?何したのよっ、ほら、謝んなさいよ、ごめんな
さいは?」
その子は自分のお母さんに言われるがままに
「ゴメンナサイ」と言う。
そしてその子のお母さんは笑顔で私に
「ホント、ど〜もスイマセンでした〜」と言う。
お母さんは何も事情を知らない。
その子に話を聞く姿勢を見せなかったし、話す時間を与えなかったんだから
当然だ。
その子の言った
「ゴメンナサイ」
は、お母さんに言われたから言ったものだ。
自分が悪かったと認めた訳じゃない。
その後その子と息子は、同じ場所にいたのに、一緒に遊ぶ事はなかった。
この様なお母さんの子は、だいたい
「あなたのお母さんとお話しよう」と言うと、ビクっとしたり突然、
「ボクが悪いですゴメンナサイ」と言いだしたりする。
この子は、自分のお母さんの側で、完全には安心できないんだと、わかって
しまう。
こういう人間同士のやりとりが、私は正直面倒臭い。
今まで自分に都合の悪い事はかたっぱしから避けてきてしまった。
息子にとって、友達と遊ぶ事も喧嘩し仲直りする事もとても大切だ。
保育園で経験はしてるが、いつも同じ子達の中での事だ。
息子にとって、プラスになる経験にもっていくのも親の役目の一つだろう。
だが私は自分の気持ちにまっすぐに行動してしまう。
日曜日、朝だいたいの家庭ではゆっくりした時間を過ごすだろう。
午前9時頃に公園へ行くと誰もいない。
私と息子だけの貸し切り状態だ。
使い放題の遊具に息子は超ご機嫌。
おもいっきり遊びまくる。
午前10時を過ぎた頃に、同じような年頃の子とそのお母さんがチラチラ公園に
やってくる。
その時息子は、一緒に遊びたそうな様子だが、既に遊び疲れているうえに、
公園が飽きている。
後から来た子と入れ代わる状態で公園を出る。
息子は公園で遊具をいっぱい使って遊べて楽しかったと話してくれる。
私は、母親として誉められる人間ではないだろう。
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第8回 素朴な息子
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こんがり日に焼けて、坊主頭に麦藁帽子、ランニングシャツに短パン姿の
息子と散歩していた。
暑い日差しの中、アリを見たり石ころを集めたり花を眺めたり楽しそうだ。
このクソ暑い中、よく遊ぶ気になれるなと、ひたすら動き回る息子を見な
がら思った。
私のそばにひとりの老人がやってきた。
とても優しそうな雰囲気のスロ〜なじいさんだった。
「あなたの息子さんですか?」
「はい、そうです。」
「子供は元気ですね〜。」
「そうですよね、こんなに暑いのに。」
「なんというか…懐かしい感じの男の子ですね。」
「……? はぁ…。」
「昔はこんな感じの子がたくさんいましたよ。」
「……そうですか、あ〜服装はそう言えるかもしれませんね〜。」
「服装だけじゃなくて、私個人の話ですが、今時の子で、小さな虫を嬉し
そうに静かに見れる子って少ないと思うんですよ。
いじめたり殺したりする子が多いように感じるんです。
池にいる鯉に向かって石を投げたり、長い木の枝で叩いたり…
自分よりも小さく弱く、絶対にやり返し出来ない生き物に対して、残酷な子が
増えたように感じるんですね。
親子の関係の影響もあるかもしれませんね。
子供を自分の考えや理想に服従させる親が増えてる気がします。
親子関係の中に、強い弱いの関係が混ざっている気がします。
強い者が弱い者を守るのではなく、強い者が勝つ、生き残るという感覚の
子が多い感じがしますね…。
あぁ…、長々と申し訳ない。
これはあくまでも私個人の話ですからね。
息子さんのように、アリを嬉しそうに静かに見れる子を見掛けると嬉しく思い
ましてね。」
「……はぁ、そうですか。」
「なんでも素朴なのが一番なんですよ。これからも、このままで子育て頑張って
くださいね。」
「…はい、ありがとうございます。」
「では、ど〜も。」
息子の事を誉めてくれたのは嬉しいが、仮にあの老人の言う通りの強い者が勝つ、
生き残るという感覚の子供達が、大人になり、その中に懐かしい素朴な息子が
入ると、息子は泳いで行けるのだろうか。
周りのカラーに染まり、生きる方が楽だろう。
私は、別に息子を素朴に育てようとしてこうなった訳ではない。
育ててみたらこうなっただけだ。
できるかどうかわからんが、素朴を残しつつも、厄介な人間に出くわしても上手く
避けて生きられるような人間を目標に育てることにしよう。
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第9回 金は大切だ
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金は大切だ。
生きていくのに必要不可欠だ。
私は世の中で一番好きなのは金だ。
金があれば困る事はないだろう。
金は使わない間は何の役にも立たない。
だだの紙だ。
金を使って初めて欲しい物を手にできる。
私は「お金持ち」が欲しい。
「お金持ち」は売っていないから作ることにした。
旦那を「お金持ち」人間に作り上げるのだ。
私の言う「お金持ち」は、デカい家に住んで、高級車運転して、ブランド物を身に
付けて…というものじゃない。
家なんてデカくなくていい。
掃除が面倒だ。
2LDKで充分だ。
車なんて動けば何でもよかろう。
バックは中身が大事だから外身は丈夫な物なら何でもいい。
私の中の「お金持ち」とは、財産を沢山持っている事ではない。
ケタはずれの貯金を持っている事でもない。
高収入で、楽しく金を使う生活をしている事を言うのだ。
必要な時に必要な金額をすぐに出せる経済力になりたい。
息子が大学行きたいだの、専門学校に行きたいと言いだしたら、すぐにポン
と資金を出せるようになりたい。
息子の生き方の希望に応えられるようになりたい。
大切なのはその時だけ。
後の事は知らん。
金持ちになり財産を残すつもりもない。
親の財産を宛にする子を産んだ覚えはないし、宛にする人間に育てる予定は
ない。
生きていく力が身についたら、さっさと出て行って立派に生きていってもらう。
旦那には、私の中の「金持ち」になってもらおうと考えてやっている。
旅行に行くのなら贅沢な旅行がいい。
絶品料理を食べてみたい。
みんな金が必要だ。
ある程度の、役に立たない金の塊抱き締めて、安心しながら生きるのではなく、
バンバン金を使って楽しく生きるんだ。
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第10回 押し売り英会話
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少し前までコンスタントにかかってきていた電話
「お忙しいところ申し訳ございません。英会話幼児教室○○○○のご案内で
お電話させていただきました。」
またか…。
「結構です。」
「あの〜、パンフレットを郵送させていただきたくてお電話いたしました。」
「結構です。」
「お子さんに英会話とかお考えになったことは…」
「ありません。」
「幼児期に英会話をやっておくと後々よろしいかと…あの…そういう方面はどの
ようにお考えに…。」
「確かに幼児期の方が覚えるのは早いかもしれませんが、母国語を覚える方が
先でしょう。」
「…母国語!?」
「はい。日本語もおろそかなのに、英会話なんて悠長な事言ってらんないと思う
んですよ。とりあえず日本で生まれたわけだし、日本で過ごしていく事が多くなる
だろうから、順番では日本語が先だと私は考えてます。」
「……はぁ…。」
「幼児期でないと英語が絶対に頭に入らないというわけではありませんし。」
「まぁ…そうですが…今の時代やはり英語は必要不可欠かと…日本にも外国の方
が増えてきていますし…。」
「えぇ、そうですね。でもここは日本です。外国の方だってそれは承知の事でしょう。
外国の方がある程度の日本語を得てから日本に入国するべきじゃないですか?
日本人が、ある程度の行き先の国の言葉を得たり、言葉のガイドブックのような物
片手に出掛けて行くのと同じように。」
「……奥様はお子さんに英会話は必要ないとお考えなんですね?」
「今は日本語が先だと判断してるんです。母国で言葉がわからんと困るでしょ。
英会話なら小学生とかになってからでも遅くないと考えてます。
いっぺんにやるのも一つの手ですが、順番にゆっくり確実に自分のモノにした方が、
最終的には良い物になると思うんです。」
「……そうですか、お忙しいところありがとうございました。では…。」
これ以来、きちんとコンスタントにかかってきていた電話は、こなくなった。
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電話03−3388−3123
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